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O町における水産加工業の現状と「共生社会」に向けた課題   1

このレポートは、茨城大学、社会連携支援 研究プロジェクトチームによる 研究成果報告からの抜粋です。
  この調査研究は2005年に行われ、2006年に発表になったものです。

 O町における水産加工業の現状と「共生社会」に向けた課題
外国人の多くが水産加工業の労働力として雇用されていることから、日本、茨城県、O町における水産業のマクロ的な特性を検討し、なぜ外国人が労働力としてO町に定住しているのか、その理由とよりよい共生関係創出に向けての課題を考えたい。

インタビューや基本的な統計の分析から、外国人労働力を必要とする根本的な原因は日本社会の変容、すなわち日本の産業構造の変化、人口構成の変容、職業選択の嗜好、日本の水産業の問題点などが複雑に絡み合っていることに求めることができる。
今回のインタビューにおいても、現場の経営者の側からはこの地区の水産加工においては、日本の労働市場の状況を考えれば、外国人労働に依存せざるを得ないということを強く認識しており、法的な整備も含めて外国人が安心して働けるような仕組みを作って欲しいという強い要望がある。
日本には原則として外国人労働にっいては単純労働を受け入れない基本方針が政府にあり、O町の水産業で外国人労働を雇用するには、日系人に頼るか、研修・技能実習制度を活用する以外に方法がない。

日系人は日本人の子孫でなければならないためおのずと雇用可能な外国人数が制限されてくる。また研修・技能実習は技能の習得が第一義に求められると同時に最大でも3年という期限が設けられていることから、経営者側はせっかく習熟してきたと思ったら帰ってもらわなければならないという不満がある。労働者からみれば、技能研修であるとの建前から、最低賃金にも達しない給与水準であるという不満も多い。O町の水産業を維持するためには、何らかの形で安定した職場を外国人労働者に提供することが必須である。

あるいは、外国人労働を認めないで、海外からの輸入に依存するのも方策である。その場合日本は自国の水産業をかなりの部分放棄し、食:の安全性やただでさえ先進諸国最低の食料自給率をさらに低下させる食糧の安全保障上の危険があることを覚悟する必要がある。外国人を多量に抱えることによる社会問題を考えるなら、外国人の単純労働を認めない選択も合理性はある。ドイツやフランスにおける移民労働者が定住者となったことで引き起こされている多くの問題も看過できない。
ただ、建前では単純労働を認めないとしながら、日系人と研修・技能実習制度を使いなし崩し的に進行している、3K職場の外国人雇用は、根本から見直されるべきであると考える。

国の政策に関連してくる問題であり、地域の協力とともに国政レベルでの論議がまたれるところであり、団塊の世代の現役引退を契機とする眼前に迫っている日本国内の労働力不足にわれわれ日本人はどのようなヴィジョンを描くのかが問われている。
日本の水産業の位相と外国人労働者が望まれる背景最近の日本の水産業は一言でいえば、長期衰退傾向にあるということができる。

日本の水産業の統計的なピークをみると、生産量では1282万トンを記録した1984年、生産額では1982年の2兆9700億円、就業者数では1953年の79万人であった。現在その生産量は573万トン、生産額は1兆6000億、就業者数は23万人と大きく減少している(日本経済新聞2006年3.月3日)。

しかしこの間日本人が魚の消費を大きく減少させたことをこの数字は意味していない。1970年代から次第に日本への水産品の輸入が漸増し国内生産を代替していった結果、後でみるように、国内の水産業が縮小した部分は水産物輸入の増加で代替されていった。今でも日本人は世界でも有数の水産物消費国であり、一人当たりの消費では動物性たんぱく質の40%を水産物からとっている。
戦後の最盛期には100%を超えていた日本の食料魚介類の自給率も、年度によって多少のぶれはあるものの、現在55%前後まで低下し、消費のおよそ半分を外国製品に依存する構造となっている。外国からの比較的安価な水産物輸入は水産物にも貿易自由化の流れが起こり始めたことから、国内の水産業に携わる人々にとって、今後も予断を許さない状況が続きそうである。1995年に合意されたWTOの枠組みのもと、2001年からドー一ハ・ラウンドの交渉が始まり、農林水産物の市場アクセスが姐上に上っており、漁業関連では漁業補償や関税措置などの交渉が進展中である。

日本ののりに関する輸入割当制度(IQ制度)は2004年に韓国からWTO違反とWTOに提訴された。当初から輸入割当制度をとっている日本の立場は弱く違反の判定がくだされる可能性が高いとされていた。2006年1月20日日本と韓国政府間で一転して合意が成立し、韓国はWTOへのパネル提訴を取り下げ、日本は今後10年で韓国産ののりに関して12億枚へ韓国の輸入枠を漸次拡大するという日本側の実質譲歩で解決がはかられた。
日本の水産業はWTOなどの貿易自由化の枠組みが強化されればされるほど、輸入水産物との競争にさらされることとなるのが理解される。

また、この多国間枠組みであるWTOの交渉のみではなく、21世紀になると2国間での貿易自由化を目指すFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)が盛んに交渉されている。
日本もシンガポール、メキシコとの協定が発効しており、フィリピンやタイ、韓国なども交渉が進展中で、他国とのFTAやEPAが進展すればするほど、水産物に関してもその輸入拡大につながる可能性が高いと思われる。

平成16年の水産白書をもとに現在の日本の水産業の就業状況を概括すると、漁業経営体数は過去15年間で30%減少し、平成15年には13万2000人となっている。漁業就労者数も過去15年で39%減少し平成15年には23万8000人となり、70歳以上などの高齢者の就業者が増大する
一方で若年層の参入はほとんどないことが指摘されている。

次の表は同様に平成15年度の水産白書から作成したものであるが、この10年間でも海洋漁業では生産する水産資源が726万トンから472万トンへ35%も減少していることがわかる。養殖は安定して125万トン前後であり、育てる漁業も増加傾向は見られない。また、沿岸漁業はある程度減少傾向が止まったように見えるが、比較的大型船に乗り込み数日あるいは数ヶ月の創業を強いられる遠洋漁業や沖合漁業は減少傾向が著しい。

おそらく、担い手となる働き盛りの日本人乗組員が集まらなくなっている現在の日本の漁業を反映していると考えられる。たとえば、カツオの一本釣りのような重労働を強いられる漁業の現場では、外国人研修・技能実習生が多く「雇用」されており、インドネシア人などの外国人の研修・技能実習生がいなくなれば、日本の食卓からカツオが消えるといわれている現実がある。

日本人の水産物の摂取は大きく減少していないことから、国内で生産が減少した水産物は輸入されることになる。輸入関係の統計を見ると、平成15年の水産物の輸入量は332万5000トンで金額は1930億に達している。世界における水産物貿易の輸入量の14%、輸入額の22%を占め、世界最大の水産物輸入国である。
ちなみに輸入先1位は中国となっている。平成15年の魚介類の国内消費向は1098万トンで、そのうち839万トンが食用である。国民一人当たりに直すと1年間で65.7キロ(粗食料)、純食料換算では36.2キロを消費している。自給率は過去100%を優に超えていたが、趨勢的には次第に低下しており平成15年の自給率は57%となっている。
水産業の斜陽は漁業所得からみることもできる。漁業所得は地域によって大きく異なるが(北海道は289万円、東シナ海160万円など)、平成15年の漁業所得の平均は前年度より4.8%減少し216万円であった。生活を維持するのにはかなり困難である数字である。
また、漁業の将来性があまり明るくないなかで、高齢化も進んでいる。漁業世帯員の27%が65歳以..ヒの高齢者で、漁業就労者23万8000人の16%4万人が女性である。

次に茨城県の統計数値をみると、海面漁業生産量では依然として全国有数の規模を誇っている。しかし価格の安いイワシ・サバなどの魚種が多く生産額はそれほど多くはないということができる。
漁業生産量は、平成14年の統計では、養殖を含まない漁業生産は全国生産高443万トンのうちの4.2%で都道府県別生産では全国5位である。一方漁業従事者数は、平成14年の統計によれば、海面漁業の従事者は女性40人男性1140人であり、男性の従事者のうち40歳未満190人、40から59歳まで390人、60歳以上が560人となっている。

茨城県の漁業でも、3Kの代表的な職種であることから、若い人の参入がほとんどなく、漁業に従事している層の高齢化が進行していることがわかる。日本の一次産業全般が第二次世界大戦後の経済成長と相反する形で、その重要性を低下させてくるなかで、元来水産業の盛んな茨城県も労働者の確保という面で多くの問題に直面しているといえよう。

このような日本の水産業の斜陽化とともに、水産業全体に対する日本人のイメージも肯定的なものより否定的な側面が強いものに変化した。日本の高度経済成長による発展から、豊かになった日本社会で育った若者は3Kへの就業を忌避するようになった。このような風潮のなか、水産業は実際に魚を捕獲する漁業従事者のみならず、その加工部門も含めて若い労働力を集めることが困難になっている。O町では輸入原材料を使った水産加工業が発展しているが、その現場でも日本人従事者の高齢化と外国人労働力に頼らざるを得ない現実がある。
次に、水産業の中でもO町の産業の中心を占めている水産加工業の現状をみてみよう。

水産加工業をめぐる全国的状況
水産加工業は一般に漁港の後背地に立地する地域密着型の産業として、地域における雇用創出的役割を果たしてきたと言われている。また、水産加工業は、地域で水揚げされる魚の最大の買い受け元としても地域経済において重要な役割を果たしている。ここでは、特に水産加工業を支えてきた労働力である女性労働者の存在に注目し、後に検討する大洗町における水産加工業で外国人労働者が果たしている役割と今後の課題を考察するための予備的論点を抽出してみたい。

水産加工業全体の経営動向としては、1970年代後半ごろまでは、出荷額で見ると水産加工品需要の増大に対応して食料品製造業全体の伸び率を上回って大幅に増大し、その後は伸び率が鈍化し、生産量で見ると特に錬り製品が70年代後半に大きく落ち込み、他方で80年代前半から後半にかけて油脂・餌肥料が人:きく生産量を伸ばした。また、塩蔵・干製品等は微増、冷凍食品も順調に生産量を伸ばした。80年代後半は、冷凍食品は外食産業の需要増大を反映して引き続き生産量を増大させたが、塩蔵・干製品等は1987年にかけて落ち込んだがその後復調して90年代に入る頃には横ばい傾向となっている。  

 
  90年代以降は、外国200海里水域内における漁獲割当量の削減などに追い打ちをかけられて国内漁業生産量の減少による原料魚介類の減少や、輸入原料価格の上昇、それに加えた消費低迷・製品の売れ行き不振、低価格化などによって、水産加工業全体の収益性が低下し、水産加工業の経営環境がいっそう厳しくなったと指摘されている。

そのような経営環境の悪化が、以前から指摘されていた労働力確保を一層困難にしたと言えるだろう。もともと地域密着型の地場産業としての水産加工業は、従業員規模別にみても30人未満の事業所が約9割、10人未満の事業所で約6割を占めているように、小規模の事業所が中心の産業である。

そのような小規模経営に伴う経営基盤の脆弱性のために、労働環境の改善もままならず、従業員の高齢化や労働力不足という人材確保上の課題が生じてきたのである。水産庁が5年ごとに行っている「水産加工業経営調査」によると、1991年の調査から1996年の調査にかけて「黒字」と答えた事業所の割合が45%から34%へと大きく低下している。

この調査では、水産加工業が抱える経営上の問題についても設問しているが、1991年調査の時点で一番多かった問題意識は、「従業員確保難」であり、62%を占めていた。それが1996年調査では「原料魚介類の減少」がトップ項目で55%、次いで大きく増えたのが「収益率の低下」で50%であった。さらに最新の2001年調査では、「売れ行き不振」が59%で最大の問題項目となり、次いで「収益率の低下」が52%と第二番目の項目となった。


このように、1990年代初頭に水産加工業者が最大の問題と感じていた「従業員確保難」以上に、近年では売り上げ不振、収益性の低下、事業の赤字体質ということが大きな問題として意識されるようになってきている。

しかしながら、このことは、労働力不足という 問題自体が解消されたということを意味しはしない。むしろ、労働力不足の背景となっていた他の製造業と比べた雇用条件・作業環境の厳しさという問題を改善することが、経営面から一層難しくなってきたということを意味するのではないだろうか。労働力構成の面での水産加工業の特徴としては、製造業全体の中でも、水産関係産業の
中でも、女性労働者の比率が非常に高いということが指摘できる。

上記の「水産加工業経営調査」(2001年)でみると、女性従業員の比率は約7割である。しかも、女性従業員のうち60歳以上が占める割合が約17%と、高齢化が進んでいる。現在、農山漁村における男女共同参画の推進が農林水産行政の課題の一つとして位置づけられている。

漁村における女性の地域活動を通じて漁村の活性化を目指すということが意図されているが、従来から注目されていた漁協婦人部の活動に加えて、もともと女性の比重が高い水産加工業という地場産業の担い手である女性たちの力を漁村活性化にどう活かしていくかということも重要な課題であるだろう。このことは、労働力確保対策の一環として指摘されてきている労働時間の短縮等の労働条件改善など、仕事と家庭の両立という課題に直面せざるをえない40代以下の若い世代、とりわけ女性の労働者を確保するための課題と一体のものどして考えていく必要もあるだろう。

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